前回のエントリでは、製造元BSA-Regal Groupの実態と、日本の窓口だったデイトナの成り立ちについて書きました。
今回は、両社が実際に運営していたBSA-SR関連ページそのものが、いつ立ち上がり、いつ更新され、いつ消えていったのか――Wayback MachineのCDX記録を突き合わせながら、時系列で追っていきたいと思います。
bsa-regal.co.uk
/BSA/ 配下の記録(英国側)

Gold SRの英国側商品ページ(/BSA/配下)について、Wayback Machineに残る最古の記録は1999年2月(SR500.html)。ただしこれはあくまで「Waybackのクローラーが最初にこのページを見つけた日」であって、実際にページが公開された日ではないことには注意です。
ドメイン全体としてはこれより2ヶ月早い1998年12月には既にクロールが始まっており、/BSA/配下がそれ以前から存在していた可能性は十分にあります。
クロールは定期巡回であり毎回全ページを網羅するわけではないため、「いつから使われ始めたか」を正確に特定するのは難しい――これはWayback調査につきまとう限界でもあります💦
分かっているのは、少なくとも1999年2月の時点で既にサイトは稼働しており、当時の主力商品として仕様選択シミュレーター(CGI製の価格コンフィギュレーター)まで用意されていた、という事実。
当時のWEB制作の仕様としては、相応に力の入ったサイトといえるのではないでしょうか。
その後の更新は少なくとも2000〜2006年の間、断続的に続いていたことを確認。
そして、2006年以降、サイトを閉じていく過程には明確な順番がありました。
- 1998年12月12日:ドメイン全体の最古の記録(トップページ)
- 1999年2月2日:/BSA/SR500.htmlの最古の記録
- 1999年8月23日:/BSA/JohnMcLaren.html(デザイナー紹介)の最古の記録
- 2006年6月15日:価格コンフィギュレーター(cgi-bin/SR500-Price.cgi)、最後の生存確認。以降は一度もクロールされていない
- 2006年7月14日:バイク部門トップページ(home.html)、最後の生存確認
- 2006年7月16日:スペック表・デザイナー紹介ページ、最後の生存確認
- 2006年7月18日:商品ページ本体(SR500.html)、最後の生存確認
- 2006年10月9日:/BSA/ディレクトリ全体、最後の生存確認
- 2006年12月15日:/BSA/ディレクトリが404に
- 2007年3月15日〜22日:スペック表・商品ページ本体も404に
つまり、「もう売っていません」という告知よりも先に、まず見積り機能(実質的な購入導線)が先行して閉鎖、その後コンテンツ群が半年ほどかけて段階的に撤去されていきました。
ちょうどこの少し後、サイト全体が2007年1月ごろに大規模リニューアル(フレーム構成→PHPベースの動的サイト)が行われていますが、Gold SR関連コンテンツの撤去はこのリニューアルと関係なく、それに先行して進められていたようです。
daytona.co.jp
/BSASR/ 配下の記録(日本側)
日本側の窓口は、デイトナが企業ドメイン配下に切った/BSASR/ディレクトリでした。
ページ本体(Bsasr.htm)の記録は次の通り。

- 2000年10月28日:最初の生存確認(この時点で既に複数回更新されていたことは、ページ内の記述からも読み取れる)
- 2001年4月・11月・12月、2002年4月と、複数回にわたって内容が更新されている記録が残る
- 2002年4月20日:最後の生存確認
- 2002年6月23日:404を確認
つまり日本側のページは、2002年4〜6月の間に消滅していたことになる…。英国側の消滅(2006年後半〜2007年初頭)よりも、実に4年以上早い撤退です。
D.I.T(Daytona International Trading)の解散
なぜ日本側がこんなに早く消えたのか。手がかりは、/BSASR/Bsasr.htmと同じURLに偶然残っていた、別件の告知ページから見つかりました。
いままでご愛好頂き誠にありがとうごさいました。 「DITコーポレーション(国内販売セクション)」は2001年12月27日をもって解散しました。
DIT(=Daytona International Tradingとみられる。)のこの告知によれば、D.I.Tの国内販売部門は2001年12月27日付で解散し、2002年1月からは他のデイトナグループ各部署に統合されたとあります。
告知文には「この告知は2002年1月31日をもって終了させていただきます」ともあったが、実際には2002年4月時点でもまだこのページは残っていました。
(――当時の一般的なサイト運営の緩さがうかがえますね💦)
Gold SR自体の英国側生産終了は2003年(後年の社史・回顧記事の記述より)でしたが、日本側の輸入・販売窓口は、それより1年以上前の2001年末には既に解散していたことになるのかな?
そして、ペイトンプレイスへの業務移管
D.I.T解散後、日本国内のアフターサポート・クレーム対応を含めた業務全般は、大阪府箕面市のカスタムショップ「ペイトンプレイス」が引き継ぐこととなります。
当時デイトナが製作したオーナーズマニュアルなどの原本資料や画像資料、当時取り上げられた各社掲載誌の原本や広報資料などについても、デイトナには現存しいないらしいです。(ってデイトナさんが言ってた)
時系列を突き合わせると・・・
ここまでの情報を一つの年表にまとめると、こうなります。
- 1997年:手組み400cc Gold SR、生産開始。最初のロット200台超が日本向けに輸出
- 1999〜2000年:欧州・米国向け500cc版発売(資料により1999年説・2000年説の両論あり)
- 2001年12月27日:日本側輸入窓口D.I.T、解散。(おそらく)以降のサポートはペイトンプレイスへ
- 2002年4〜6月:日本側商品ページ、サイトから消滅
- 2003年:英国側、生産終了。後継の1,000ccコンセプト機「Tempest」も量産化されず
- 2006年6月〜2007年3月:英国側商品ページ、段階的にサイトから撤去
- 2007年:BSAとMZ(提携先ブランド)の関係終了。同年、Norton Commandoパーツ事業の入札にあわせ、BSAの欧州商標がBSA側に返還される
日本と英国、どちらもほぼ同時期(2001〜2003年)に実質的な終焉を迎えていますが、サイト上の情報が完全に消えるタイミングにはズレがありました。
日本側は解散から半年ほどで速やかに畳まれたのに対し、英国側は生産終了から3年以上、情報だけはサイトにアップされ続けていたことになります。
(これは、ブランドサイドの矜持なのか、それとも単にサイト管理が緩かっただけなのか…)
その後、令和のBSAへ
Gold SRという車両単体の物語はここで終わってしまいますが、「BSA」というブランド名自体は、この後も数奇な経路をたどっていきます。

BSA-Regal Group自体は、2007年のMZ関係整理・商標返還を経て事業を継続し(前回お伝えしたとおり、現在もEngineering Holdings傘下で存続)、一方でBSAというブランド名は2016年、インドのMahindra Group傘下Classic Legendsが買収。
ドメインbsacompany.co.ukは2020年3月に取得され、約1年8ヶ月の準備期間を経て2021年、新型「Gold Star 650」のオフィシャルサイトとして稼働しており、車両は現在インドで生産されています。
平成のGold SRを作ったBSA Company Ltd.と、令和のBSAを作っているClassic Legendsは、資本的には無関係の別物なのですが、同じ「BSA」の名を掲げたバイクが、南英サウサンプトンと南アジア・インドという遠く離れた場所で、約20年の間隔を空けて生まれていたという事実は、このブランドの不思議な生命力を物語っているように感じます。
そしてBSA-SRの情報についてさらに深堀る…
次回は、英国側公式サイトのコンテンツを日本語に訳しつつ、デイトナ版日本公式サイトの紹介文と対比してみたいと思います。