フランスのカスタムビルダー、Cévennes Rétromotors(CRM)が手がけた一台のDucatiが、世界中のバイクファンの視線を釘付けにしています。その名も「Shibumi」。奇をてらったギミックではなく、圧倒的な発想力と職人技が融合した本作は、見る者を立ち止まらせ、じっくりと観察したくなる説得力を備えています。
詳細情報:ベースはDucati Scrambler 1100、しかし面影はわずか
このプロジェクトは2023年10月、1台の2018年式Ducati Scrambler 1100を素体として始動しました。しかし完成した「Shibumi」には、ボローニャ生まれのオリジナルの面影はほとんど残されていません。 ビルダーのCédric Trenquier氏が維持したのは、空冷1,079cc Desmodue V型2気筒エンジン、ホイール、そしてブレーキシステムの3点のみ。それ以外のすべてを再構築するという、極めて大胆なアプローチが取られました。 純正フレームは完全に廃棄され、代わりに25CD4Sクロムモリブデン鋼を用いたフルオーダーメイドのフレームが新造されています。クロムモリブデン鋼は強度と靭性に優れた素材として知られ、軽量かつ高性能なチューブラー構造を実現する上で理想的な選択といえます。さらにフロント周りでは、純正のDucati製フォークに代わり、MV Agusta Brutale 800由来のフォークが採用されました。これにより、車体の姿勢はよりアグレッシブなものへと一変しています。
カスタムの見どころ・意義:ドナー車の制約を超えた「設計思想」
「Shibumi」最大の見どころは、単なる部品の寄せ集めではなく、Cédric氏自身のビジョンを起点にシャシー全体が設計し直されている点にあります。一般的なカスタムビルドでは、ベース車両のフレームやディメンションを前提にパーツを組み合わせていくケースが多く見られますが、本作ではその発想が逆転しています。 エンジン・ホイール・ブレーキという走行の根幹をなす要素だけを残し、それ以外をゼロから作り上げるという手法は、相応の技術力と確固たる設計哲学がなければ成立しません。他メーカーであるMV Agusta製フォークの移植も、単なる流用に留まらず、新設計フレームとの整合性を緻密に計算した上で実現されたものと推察されます。 伝統的な板金成形技術と、未来的ともいえるデザイン言語が同居している点も、本作を特別な存在にしている要因です。カーブの一つひとつ、パーツの一つひとつに意図が込められており、その完成度の高さはカスタムシーンにおいても群を抜いています。
まとめ
Cévennes Rétromotors(CRM)が手がけた「Shibumi」は、2018年式Ducati Scrambler 1100をベースにしながらも、エンジン・ホイール・ブレーキ以外をすべて刷新した異色のカスタムビルドです。25CD4Sクロムモリブデン鋼製フルオーダーフレームとMV Agusta Brutale 800由来のフォークの組み合わせにより、ドナー車の制約を超えた独自の走行性能とスタイルを獲得しています。ビルダーの確固たる設計思想が随所に表れた本作は、カスタムバイク愛好家にとって必見の一台といえるでしょう。